研究内容
材料化学工学から医療・工業分野の応用研究へ
-機能性微粒子合成プロセスの確立からウイルス検出技術の開発まで-
1. 糖固定化ポリマー粒子のワンポット合成
ウイルスやタンパク質と特異吸着する糖鎖を表面固定化したポリマー粒子のワンポット合成を行っている。本研究の特徴は、粒径均一性が高い(単分散)ポリマー粒子形成と、その表面への糖鎖の固定化を同時並行的に行うことである。
これまでに、疎水基(オクチル基)をもつ糖(グルコース)を用いることにより、形成過程のポリマー粒子中に疎水基部をアンカー(錨)として埋め込み、親水性の糖部分を粒子表面に偏在させることに成功した(Colloids
Surf. A, 580, 123754, 2019)。ポリマー粒子の合成法としては、水溶媒を用いる環境低負荷なソープフリー乳化重合を利用している。
2. 低極性アミン溶媒を用いた疎水性ハイブリッドシリカ粒子のワンポット合成
作製後のシリカ微粒子表面を疎水化するのではなく,シリカ形成の原料モノマーであるオルトケイ酸テトラエチル(TEOS)と,疎水基としてヘキシル基をもつヘキシルトリメトキシシラン(HTMS)を共重合することにより,表面に疎水基を有しシロキサン結合(-Si-O-Si-)を骨格とするハイブリッドシリカ微粒子をワンポットで作製した(Colloids
Surf. A, 553, 253-258, 2018)。ここで,生成粒子がヘキサンなどの無極性溶媒中で一次粒子分散するほど十分な疎水性をもつためには、HTMS由来のヘキシル基が粒子表面に多数存在する必要がある。そこで本研究では、低極性溶媒であるジエチルアミン(比誘電率3.68)中で粒子形成を行うことにより、ジエチルアミンと親和性が高いヘキシル基を自発的に粒子表面に存在させることを狙った。ジエチルアミンは、TEOSやHTMSを溶解できるとともに、加水分解に必要な水とも相溶性がある。さらに、ルイス塩基であるため、TEOSおよびHTMSの脱水縮合反応を促進する触媒としての働きも持つ。
疎水性相互作用を利用して、疎水化糖鎖ポリペプチドを粒子表面に固定化する研究も進めている(ACS Appl. Bio Mater., 2, 1255-1261,
2019)。
3. Fe3O4ナノ粒子の疎水性シリカナノコーティングによる磁気特性の保護
両親媒性ジエチルアミン溶媒中で、磁性ナノ粒子(Fe3O4ナノ粒子)表面の疎水コーティングを行ったところ、ナノオーダーの極めて薄い疎水コーティング層が形成され、さらに磁性ナノ粒子の酸化抑制効果を有することを確認した(Colloids
Surf. A, 508, 178-183, 2016 /塗装工学, 54, 274-280, 2019)。